相続した家が事故物件になってしまった、というケースは少なくありません。このような物件を保有し続けるのは心理的・経済的に苦しいと感じる方も多いものです。そこで、事故物件の売却を行う際に開示する範囲や、事故物件である事実を隠して売却しようとした際のリスクなどについて解説します。
事故物件とは?法律上の扱いと定義
特に心理的瑕疵がある不動産を「事故物件」と呼びます。心理的瑕疵とは、一見設備や家の中は普通の家と変わりがなかったとしても、そこに住むにあたって心理的に抵抗感などを抱く状態のことです。事故物件にはさまざまな種類がありますが、例えば家の中で自殺や事件、火災などによる死亡が発生したケースなどが該当します。
このような事故物件の売却を行う際には、売主は買主に対して事故があった事実を伝える「告知義務」があります。賃貸取引の場合、告知義務は3年と定められていますが、売却を行う場合告知義務には時効がないため、事故から何年経過したとしても解除されません。また、物件を更地にしたり建て替えをしたりしても告知義務が消えることはなく、売主は売買の際に心理的瑕疵の存在を買主に対して必ず伝える必要があります。
隠すことは可能なのか?
心理的瑕疵がある物件は売れにくいというイメージから、その事実を隠したいと考える人もいるかもしれません。しかし、民法・宅建業法によって、売主は「重要事項説明」を行うことが決められています。心理的瑕疵については、契約締結前に重要事項説明の一環として行う必要があり、故意に隠した場合には契約解除や損害賠償リスクが生じます。
また、売却を委託する不動産会社も告知義務を負っているため、現実的に考えると、事故物件である点を完全に隠すことは困難です。
実際に開示すべき内容の範囲
例えば、事故が「その住所」「その部屋」で発生した場合には、高い告知の必要性があるといえます。ただし、隣の家や敷地外で発生した事故の場合には説明が不要とされているケースもあります。
孤独死も事故物件に該当しますが、発見された状況によっては対象外となる場合もあります。ただし、特殊清掃が必要となった場合には、事故物件に該当します。また、特殊清掃済みなど状況が改善したとしても、心理的瑕疵として説明を行う必要があります。
事故物件がバレる主な理由
もし事故物件であることを隠していたとしても、さまざまな理由によってバレる可能性があります。どのような状況が考えられるのかを下記にまとめました。
- 事故物件の情報が近隣住民の噂や口コミなどから広まるケース
- 物件売却にあたり不動産仲介業者が物件調査を行った際に、近隣住民から情報を得るケース
- 過去に売却をしようとした際の広告や募集情報から、事故物件であることがわかるケース
- 殺人事件などがその物件で起こった場合、裁判記録や新聞に掲載された情報から事故物件という点が判明するケース
- 特殊清掃のスタッフやリフォーム業者がその物件に出入りしているために事故物件である点が判明するケース
事故物件を隠した場合のリスク
もし事故物件を隠して取引を行った場合には、さまざまなリスクが考えられます。例えば下記のようなリスクが挙げられます。
- 取引後に判明した場合、「契約解除」や「売却代金返還」、「損害賠償請求」につながる可能性
- 不動産業者からの信用が低下するため、買主がなかなかつかなくなってしまうリスク
- 相続人自身の精神的負担が大きくなってしまうリスク
売却を考える遺族が取れる現実的な選択肢
該当の事故物件を相続した遺族が、売却したいと考える場合の選択肢としては、「事故物件の買取」を専門としている業者に売却する選択肢があります。この場合、通常より売却価格は下がるものの、早期に現金化ができる点がメリットです。
また、リフォームや遺品の整理を行うことによって心理的な抵抗を和らげるための工夫を行う、告知を前提として一般市場に出した上で、価格の調整や告知の仕方など販売戦略を工夫するといった方法も考えられます。
他にも弁護士や不動産コンサルタントに対し、売却の相談を行う方法もあります。
事故物件の売却で後悔を避けるためには?
事故物件の売却を行うにあたって、後悔をしないために大切なのは、まず「告知を行うこと」であるといえます。これが法律的安全策であることからさまざまなリスク回避ができ、最終的な安心に繋げられます。このように、透明性を確保することによってトラブルが発生しにくい売却ができることとなります。
また、一刻も早く物件を手放したいと考えている場合には、事故物件の買取を行っている専門業者を活用することが有効な選択肢です。
まとめ
事故物件の売却について解説してきました。事故物件である点を告知すると、売却がしにくくなるという考えから告知を行わずに話を進めたいと考える人もいるかもしれませんが、事実を隠して売却を行おうとすることは、法律的にもリスクが高いといえます。できるだけ早く売却を行いたいと考えている場合には、専門家に相談することがおすすめです。

