
『ハッピープランニング株式会社』代表
相談実績が豊富な、
事故物件対応のプロフェッショナル。
所有しているアパートが事故物件になると、「もう売れないのでは?」と不安になるもの。しかしながら実際には、事故物件であっても売却は可能であり、適切な手順を踏めば買主が見つかるケースもあります。
ただし、売却価格は相場より低くなる傾向がある点、また告知義務など特有の手続きが必要になる点は理解しておきましょう。
アパートの事故物件の売却相場
一口に事故物件とは言っても、心理的瑕疵物件や物理的瑕疵物件など、状況により売却相場は異なります。以下では、それぞれの事故物件の売却価格の目安として、公的機関の統計に基づいた相場感をご紹介します。
心理的瑕疵があるアパートの売却相場
心理的瑕疵のあるアパートは、購入希望者が心理的な抵抗を感じるため、相場より価格が下がるケースがあります。どの程度価格が下がるかは、事案の内容や周辺への知れ渡り具合、事故からの経過年数、特殊清掃の有無、原状回復が行なわれた範囲や程度などによって変わってきます。
一般的な目安としては、孤独死で特殊清掃を要した場合は1割程度、自死の場合は3〜5割程度、殺人などの事件性が強い場合は5割程度の下落が見られることもあります。
ただし、これはあくまで目安です。実際には、今後の賃料下落や空室期間なども考慮しながら、物件ごとに個別の査定を行う必要があります。
物理的瑕疵があるアパートの売却相場
物理的瑕疵があるアパートの場合、買い手は将来的に高額な修繕費を負担するリスクを抱えることになります。そのため、価格は修繕にかかる実費だけでなく、買い手が感じる心理的な抵抗感や、将来的な収益への影響も考慮して決まります。具体的には、空室リスクや賃料下落の見込みなども反映されて価格が調整されます。
雨漏りや設備の不良など、修繕範囲が限られている不具合については、修理の見積額をもとに値引き交渉が行われるケースが多いでしょう。一方、シロアリ被害や建物の構造に関わる不具合の場合は、詳しい調査が必要になることに加え、工事を進める中で追加の修繕が発生する可能性も含めて価格が決まる傾向にあります。
買い手側としては、既存住宅売買瑕疵保険などの限度額に相当する出費リスクを想定することになるため、保険の補償上限が価格の参考になる場面もあります。
たとえば、アパートの1室であれば、リフォーム瑕疵保険の金額である100万円から2,000万円程度が目安です。1棟全体でシロアリ被害などにより基礎部分から損傷している場合には、大規模修繕瑕疵保険の金額である1,000万円から5億円程度が想定されます。
ただし、保険が適用されるかどうかは物件の状態や条件によって異なります。そのため、実際には物件ごとに個別の査定を受けることが必要です。
(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001849549.pdf)
アパートが事故物件とされるケースとは?
「事故物件」と聞くと、人の死亡事故があった物件をイメージする方が多いでしょう。実際、売買の場面で問題になるのは、買い手が心理的な抵抗(死亡事故など)を感じやすいケースが中心です。
ただし、売却を進める際には、心理的瑕疵だけでなく、建物の不具合である物理的瑕疵、周辺環境に起因する環境的瑕疵、法令による制限がある法的瑕疵についても整理しておく必要があります。
心理的瑕疵物件とされるケースとは?
国土交通省が公表しているガイドラインでは、取引の相手方が「気味が悪い」「避けたい」と感じ、購入の判断に影響を与える可能性がある事案を心理的瑕疵として扱うとされています。
具体的には、自死や他殺、事故死などが該当します。また、孤独死の場合でも、発見が遅れて特殊清掃が必要になったケースでは、告知義務が問題になることがあります。
心理的瑕疵の有無を判断する際には、死亡事故が起きた場所が専有部分なのか共用部分なのか、事故からどれくらいの期間が経過しているのかといった要素を分けて整理しておくことが大切です。これらの情報を、仲介会社や買取業者にきちんと共有しておくと、その後の売却がスムーズに進みやすくなります。
口頭だけでなく書面に残す意識も、後日の行き違い防止につながるでしょう。
(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001426603.pdf)
共用部での事件は告知義務対象外
区分所有のアパートで1室を売却する場合、ガイドラインでは「その住戸内」で起きた死亡事故を中心に告知を検討することになります。つまり、共用部分で発生した事案については、原則として告知の対象外です。
ただし、報道などで広く知られているなど、購入の判断に影響を与える可能性がある場合には、例外的に共用部での事件にも告知が必要になることがあります。
環境的瑕疵物件とされるケースとは?
環境的瑕疵とは、建物自体には問題がなくても、周辺の環境が原因で買い手が購入をためらいやすい状態を指します。たとえば、近隣に墓地や火葬場がある、暴力団関係の施設がある、騒音や悪臭の発生源がある、深夜まで営業している施設がある、といったケースです。
これらは人の死とは別の問題ですが、購入希望者に強い嫌悪感を与える点では、心理的瑕疵として扱われる場合もあります。
環境的瑕疵のある物件について告知が必要かどうかは、物件と施設がどのくらい離れているのかや、物件から施設がどの程度見えるかといった状況によって判断が分かれます。具体的な状況を仲介会社や買取業者に共有しておくと、告知の要否について適切な判断がしやすくなるでしょう。
物理的瑕疵物件とされるケースとは?
物理的瑕疵とは、建物や土地に何らかの不具合があり、修繕や補修が必要な状態を指します。
建物に関しては、シロアリ被害、雨漏り、外壁のひび割れ、給排水管の劣化などが代表的な例です。土地に関しては、地盤沈下、擁壁の不具合、造成地の崩れやすさなどが挙げられます。
アパートの場合であれば、各住戸での雨漏りや水漏れ、床の傾き、結露が原因で広がったカビなども、売却時に問題になりやすいポイントです。
こうした不具合を放置していると修繕費用がかさんでしまうため、まずは現状をしっかり把握することが大切です。調査結果や修繕の見積書を用意してから売却の方針を決めれば、その後の交渉がスムーズに進むでしょう。
法的瑕疵物件とされるケースとは?
法的瑕疵とは、法律や条例、契約上の制限によって、建物や土地の利用に制約がかかっている状態を指します。
代表的なのが「再建築不可」の物件です。この場合、建て替えや大規模な増改築ができないため、買い手が想定している活用方法が実現できない可能性もあります。そのほかにも、建築基準法に適合していない違反建築、接道義務を満たしていない敷地、用途地域や高さ制限によって希望する建築計画が認められないケースなども、法的瑕疵に該当します。
相続でアパートを引き継いだ遺族の方の中には、図面や検査済証といった書類が手元にないというケースも少なくありません。書類がなく何からどう動けばよいか分からない場合には、役所での調査や資料の整理から相談に乗っている買取業者に相談してみると良いでしょう。
アパートが事故物件となった場合、売主や貸主には、買主・借主に対して事実を告知する義務が生じます。適切に告知し、買主・借主が納得すれば売買や賃貸に支障はありません。
告知が必要な期間は、賃貸であれば事故物件となってから3年間が目安。一方、売買には期間の定めがなく、死因や経過、社会的影響などの個別事情に応じて告知義務の期間が判断されることとなります。
告知が必要にも関わらず怠った場合、売主・貸主は契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)を根拠に、損害賠償や契約解除、減額請求等を受けるおそれがある点にご注意ください。売却・賃貸に際しては、不動産会社と情報整理を行い、国土交通省のガイドラインを参照しながら適切なタイミングで必要な情報を開示することが望まれます。
参照元:国土交通省[PDF](https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001426603.pdf)
アパートの事故物件の告知義務を怠った場合のリスク
補償請求
契約後に事故の事実を知った買主から、修繕費や仲介手数料、その他の費用の返還を求められることがあります。双方で見解が食い違えば、紛争に発展するおそれもあるでしょう。
減額請求
買主が「事故物件であるなら価格が低くなるはず」と主張し、売買代金の一部返還を求める場合もあります。結果として、買主は当初想定した売却益を確保できない可能性が高まります。
損害賠償請求
事実を隠して契約した場合、買主から損害賠償を請求されるおそれがあります。心理的瑕疵を巡る裁判では、慰謝料や引っ越し費用の支払いを命じられることも想定されます。
契約解除
買主が「取引の前提が崩れた」と判断すれば、契約の解除を求めてくる可能性があります。売主にとっては再販売の手間や価格の下落など、大きな損失につながるリスクが残るでしょう。
事故物件となったアパートを売却するポイント
特殊清掃・リフォームで綺麗に
事故発生後の部屋は、まず「再び人が住める状態」に整えることが出発点となります。特殊清掃で臭いや汚れを除去し、衛生的な環境を取り戻しましょう。そのうえで、クロスや床材を張り替えるなど軽いリフォームを行えば、印象が大きく変わります。
外観や共用部の清掃も合わせて実施すれば、内見時の印象も向上。心理的な抵抗をやわらげる効果も期待できるでしょう。
一定の期間を空ける
事故後すぐに売却を進めると、地域内での印象が残っていることもあり、買主が見つかりにくいこともあります。そのため、場合によっては一定の期間を空けた上で売却活動を始めることも、現実的な選択肢の一つとなるでしょう。
時間を空けている間に、清掃や改修、必要書類の整理を進めておけば、次の手続きもスムーズになります。焦らずタイミングを見極めることが、売却価格の安定にもつながるでしょう。
更地にする・建て替える
建物の印象を一新したい場合は、解体して更地にするか、または建て替えするという方法も有効な選択肢。古い建物のままでは事故の印象が残りやすいため、買主が敬遠する可能性があるからです。更地として売却すれば、建物の心理的瑕疵を理由にした値引き交渉を避けられる場合もあるでしょう。
ただし、解体や新築には費用がかかるため、売却見込み価格との支出とのバランスを慎重に見極めることが大切です。
事故物件の買取業者に依頼する
自力で買手を探すのが難しい場合は、事故物件の買取を専門とする業者に相談する事も有効です。
これらの業者は心理的瑕疵物件への理解が深いため、一般的な仲介よりも短期間で売却が完了することが多いのが特徴。価格は相場より下がる傾向があるものの、現金化までのスピードや手間の少なさを重視する方には適した選択肢です。「とにかく早く手放して、次の物件でリセットしたい」という方は、すぐにでも専門の買取業者へ相談するようおすすめします。
アパートの事故物件の売却に関するQ&A
Q.事故物件の売却に死亡診断書は必要ですか?
A.売却手続きそのものに、死亡診断書の提出が義務づけられているわけではありません。ただし、事故発生の有無や経緯を確認するために、不動産会社や買取業者から提示を求められるケースもあります。
その際は、死因や個人情報を除いた写しを提出するのが一般的。法的義務ではなく、取引の透明性を保つための確認プロセスという位置づけです。
Q.入居者が自殺した場合に損害賠償は請求できますか?
A.入居者が室内で自殺した場合、オーナーは経済的・精神的な損失を受けることがあります。このようなケースでは、遺族に対して損害賠償を請求できる可能性がありますが、実際に認められるかどうかは状況次第。たとえば、遺族に支払い能力がない場合や、本人の責任が明確でない場合には請求が難しくなることもあります。
請求内容としては、原状回復費用や特殊清掃費、空室期間中の家賃損失などが一般的です。感情的な対立に発展しやすいため、弁護士など専門家を通じた対応が望ましいでしょう。
実際の請求可否は、契約内容や事故の経緯を踏まえて慎重に判断されることとなります。
Q.遠方に住んでいて立ち会えなくても手続きは可能ですか?
A.遠方に住んでいても、現地に行かずに事故物件の売却を進めることは可能です。不動産会社に委任状を提出すれば、現地確認や契約手続きを代理で行ってもらえます。
必要書類を郵送で、相談をオンラインで行なえばリモートのみで売却が完結。売却後の清算も郵送や振込で進められるため、距離が障害になることはほとんどありません。
まとめ
アパートが事故物件となっても、売却自体は可能です。ただし、価格の下落や告知義務など、一般の取引にはない要素もある点を理解しておきましょう。
心理的瑕疵の扱いや買主への説明を誤ると、後々のトラブルにつながる可能性があります。トラブルを避けるためには、事故物件の扱いに詳しい専門家へ相談し、状況に合った売却方法を選ぶことが重要です。
