
『ハッピープランニング株式会社』代表
相談実績が豊富な、
事故物件対応のプロフェッショナル。
アパートや戸建てなど、自身が所有している賃貸物件において悲しい事故や孤独死が発生してしまった場合、今後の賃貸経営や売却について頭を悩ませてしまう方も多いのではないでしょうか。こちらの記事では、賃貸物件が事故物件となった場合の売却相場や、売却を行う場合の告知義務、売却において知っておくべきポイントに加えて、買取を依頼する業者の選び方などについてまとめています。
賃貸の売却相場
古いアパートや賃貸戸建てなどの物件を所有しているケースでは、建物そのものに「法的瑕疵(ほうてきかし:法律上の欠陥)」が潜んでいるケースが少なくないといえます。このような物件が何らかの理由によって事故物件となった場合には、売却相場にどのような影響を与えるのかを解説していきます。
再建築不可物件の場合
都市計画地域と準都市計画地域に指定された区域内において、建築基準法によって設けられている「接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならない)」を満たしていない物件を「再建築不可物件」と呼びます。このような物件は、建て替えや増改築ができないなどのデメリットがあります。そして、再建築不可物件の場合には、周辺にある通常の土地と比較すると、価格が3割から5割程度まで下落します。
既存不適格・違反建築物の場合
「既存不適格物件」とは、その物件が新築された当時は法律に適合した形で建てられていたものの、現在の法律に照らし合わせると基準を満たしていない物件を指します。また、「違反建築物」は、建築当初から法律に適合していない建築物や、法令に適合していない増改築などを行った建築で、例えば建築確認申請を行った後に法令に沿わない内容に変更して建築した物件などが当てはまります。
既存不適格物件や違反建築物に当てはまる場合、その物件は通常の市場価格と比較すると2割から4割安くなる傾向があります。
法的瑕疵は事故物件に該当する?
上記でご紹介した「再建築不可物件」や、「既存不適格・違反建築物」などの法的瑕疵がある物件と、入居者が亡くなった「事故物件(心理的瑕疵)」は全く異なる性質のものです。ただしいずれの物件においても、賃貸に出す場合や売却するなど取引を行おうとする際には、事前に告知を行うことが必要となります。
法的瑕疵が「事故物件」にならないケース
建物の違反建築などの法的瑕疵がある物件だからといって、それが必ずしも「事故物件」となるわけではありません。さらに、物件内で入居者が亡くなった場合でも、全てのケースで告知が必要となる事故物件となるとは限りません。
例えば、老衰や病死などの自然死や、つまづいて階段から落ちる・入浴中の急死など日常生活の中での不慮の事故死は、原則として事故物件にはなりません。ただし、発見が遅れたりした場合には事故物件として告知義務が生じる可能性がある点に注意が必要です。
事故物件になると「告知義務」がある
事故物件に該当する場合には、「告知義務」があります。告知義務とは物件内で発生した人の死や事件といったように、その物件の購入や賃貸を希望する人に心理的な影響を与える可能性のある事実を契約前に伝える、という義務です。これは、契約締結前に重要事項説明の一環として行います。
もし保有している物件が事故物件に該当する場合には、告知義務を怠って事実を隠して取引することは、法律上許されないため、必要な事柄についてしっかりと伝える必要があります。
告知義務の基準:賃貸と売却での決定的な違い
国土交通省による「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、対象となる物件が事故物件となった場合、「賃貸(経営を続ける)の場合」と「物件を売却する場合」それぞれにおいて、告知義務の「期間」に下記のような違いを設定しています。
- 賃貸に出す(経営を続ける)ケース:
孤独死(特殊清掃が必要なケース)や自死などがあった場合には、事故が発生してから「概ね3年間」は、次の入居者に告知を行う義務がある - 売却する場合:
告知義務について期間の限定はなく、原則として「永続的」に次の買主に告知を行う義務がある
上記のように告知義務の期間が設定されているため、物件オーナーは「賃貸に出すのであれば3年我慢すればその後は告知しなくて済む」と考えてしまいがちですが、告知義務のある3年間は大幅に家賃を下げる必要が出てくる点が落とし穴となる可能性があります。そのため「やはり賃貸を続けるには経営が苦しいから売却したい」と考えたとしても、その場合には過去の事故について永久に告知をする必要があることから、根本的な解決にはならないといえます。
賃貸・事故物件の売却で直面する5つの問題
住宅ローンの審査が通らない
再建築不可物件や違法建築物件などの法的瑕疵がある点に加えて、事故物件となっているアパートや戸建ての場合には、物件の担保評価が低く見積もられる点に注意しなければなりません。金融機関で住宅ローンの審査を行う場合には、借り手の返済能力はもちろん、物件そのものの担保価値もチェックされますが、事故物件の場合には不動産としての評価が低くなります。そのため、もし購入したい人が現れたとしても住宅ローンを組めない、また投資家が「不動産投資ローン」を組むこともできない、といった状況に陥ってしまいます。
売却価格が大幅に下落する
事故物件はどうしても家賃相場が下落してしまいます。一般的に、通常の家賃と比較すると「3割から5割引き」という家賃になりますが、投資用物件の場合には売却価格は利回りで逆算されます。この点から、家賃の下落は売却価格にも影響するため、もしその物件を購入できる人が現れたとしても、大幅に価格が下落した状態で売却することになります。
一般の不動産屋に断られる
物件を売却しようとする場合には、一般的には不動産会社に仲介を依頼します。しかし、その後の入居者とのトラブルや、売却した後の買主からのクレーム(契約不適合責任の追求)を恐れるため、「賃貸中の事故物件」や、「法的瑕疵のある物件」を不動作会社に持ち込んだとしても、仲介そのものも断られるケースも考えられます。このように、売却をしたいのに仲介してくれる業者が見つからず、どうにもできないといった状況に陥る可能性もあります。
行政から是正勧告を受けるリスク
仲介業者が見つからない、賃貸にも出せないといった形で、対象となる物件を空室になったタイミングからそのまま放置してしまう状況も考えられます。しかし、空き家をそのまま放置した場合には、行政から是正勧告を受ける可能性もあり、「特定空き家」に指定されるケースもあります。
この「特定空き家」とは1年以上誰も住んでいない状態の家で管理が不十分であることから、このままの状態が続くと倒壊の恐れがあるなど保安上危険がある状態や、著しく景観を損なっている、衛生上有害となる恐れのある状態などに、指定されるとされています。もし指定された場合には税金の優遇措置が受けられなくなるため、固定資産税が最大6倍に跳ね上がる可能性があります。
売却後のトラブル(損害賠償)
もし告知義務違反を怠り、買主に対して事故の事実を隠して売却する、次の入居者に告知を行わずに賃貸契約を結んだ場合など、後から事故に関する事実が発覚する際には巨額の損害賠償を請求される、契約解除に関する裁判が行われるなどのリスクが考えられます。このような売却後のトラブルを防ぐためにも、告知義務はしっかりと守り、買い手や借り手に告知を行うことが大切です。
賃貸・事故物件の売却で知っておくべき方法とポイント
「現況のまま」専門家に手渡すことを検討
事故物件を売却したいと考える場合には、「現況のまま」専門の業者に渡すことを検討すると良いでしょう。例えば、アパートなどの場合には、他の部屋にまだ入居者がいる場合もあります。このようなケースでも、賃貸借契約を引き継いだ状態となる「オーナーチェンジ」を行うというように、専門の業者にアパート丸ごと買い取ってもらうという選択肢もあります。専門的に事故物件を取り扱っている業者に依頼することによって、買取をスムーズに進められます。
他の入居者の「退去ドミノ」が起きる前に、スピード決着を目指す
もし賃貸アパートやマンションで事故が発生した場合には、「風評被害による他の入居者の連鎖的な退去」、すなわち退却ドミノの発生が最も恐ろしい状況であるといえます。警察が出入りする、異臭などの発生によって事故の噂が広まってしまった場合には、全く関係のない部屋の入居者が次々と退去してしまうケースも十分に考えられます。
このような被害を最小限に食い止めるには、事故の噂が広まる前に、オーナーチェンジなどによってスピーディーに対応することが必要になります。
一般的な「不動産の一括査定サイト」や「AI査定」を鵜呑みにしない
自身が所有する物件の相場を知るために、インターネットで提供されている「一括査定サイト」や「AI査定」などのサービスを利用するオーナーも多くいます。しかし、事故物件や法的瑕疵のある物件の場合は注意が必要となります。「事故物件なので値下げをして欲しい」といった形で、査定サイトやAI査定によって算出された価格から大幅に価格を下げられる(干し殺しにされる)ケースも考えられますので、査定サイトなどの価格を鵜呑みにしないという点も注意すべきポイントです。
【失敗しない】賃貸・事故物件に強い買取業者の選び方
「再建築不可」や「違反建築」の買取実績があるか
依頼しようとしている買取業者が、「事故物件」「再建築不可・違反建築」の買取実績があるかは非常に重要です。その業者のホームページなどでこれまでの実績を確認できるため、あらかじめ確認しておいてください。具体的な実績数や、買取の事例などをチェックすると良いでしょう。このような物件の買取実績があれば、買取に関するノウハウを持っていることから、査定がスピーディなど対応をスムーズに進めてもらえる可能性があります。
顧問弁護士や専門の士業と連携しているか
「事故物件」「再建築不可・違反建築」の物件の場合には、原状回復費用の請求や残置物(遺品)の処理など、複雑な法律問題が発生することがあります。そのような状況に備えて、顧問弁護士がいるなど専門の士業と連携しているかが重要なポイントとなってきます。ワンストップで連携している買取業者の場合には、上記のような面倒な法律トラブルや、立ち退き交渉なども引き受けた上で買取を行ってくれます。
瑕疵担保責任(契約不適合責任)を100%免除してくれるか
プロである買取業者に対し、物件を直接売却する場合には、契約書に「契約不適合責任を一切免責とする」という記載を入れてもらえます。契約不適合責任とは、「種類や品質、数量に対して契約内容に適合しない目的物の引き渡しを行った時の売主の責任」をいいます。この契約不適合責任を免責とするという内容の契約を締結することによって、もし売却後に万が一新たな建物の欠陥が見つかった、過去の入居者トラブルが再燃したとしても、売主に損害賠償や解約を請求されることがなくなります。
賃貸・事故物件売却の流れ
専門査定の依頼
はじめに、事故物件の取り扱い実績が豊富な専門業者に査定を依頼します。ここでは、物件の基本情報や事故に関する状況、現在の物理的な状況について正確に伝えることが重要になってきます。
一般の不動産会社に相談した場合には、取り扱いを断られてしまったり、評価が極端に低くなったりしがちですが、専門業者の場合は特殊清掃やリフォームのノウハウなどを持っているため、適切な評価が期待できます。また、ここでは複数の専門業者に対して相見積もりを依頼することもおすすめです。
法的リスクの精査と価格提示
買取業者に依頼すると、物件の現地調査を実施し、告知義務の対象となる心理的瑕疵の程度や法的なリスクについて精査を行います。さまざまな調査を実施した上で、特殊清掃や修繕、残置物の処理などにかかる費用を算出し、最終的な買取価格を売主に提示します。
専門業者の場合には、業者がプロとしてリスクを引き受けます。そのため、売主の「契約不適合責任」が免除される条件で提示されることが一般的なメリットといえます。
現状有姿での契約・決済
提示された買取価格や条件に納得できるようであれば、売買契約の締結を行います。専門業者によって買取を行う場合には、残置物の撤去・特殊清掃などを事前に行わず、現状有姿(そのままの状態)で買い取ってもらえるケースが多いため、売主の負担を大幅に軽減することが可能です。
契約を締結した後は、あらかじめ定めた期日に決済と物件の引き渡しが行われます。専門業者による買取であれば物件の購入希望者を探す必要がないため、スピーディーに手続きが進みます。
よくある質問(FAQ)
Q. 事故物件は売却するのと、家賃を下げて賃貸経営を続けるの、どちらが良い選択?
いずれの選択肢も可能ですが、オーナーの精神的な負担や将来の売却リスクについて考えた場合には「早期の売却」を行う方がおすすめであるといえます。もし家賃を下げて賃貸経営を継続した場合には、今後も修繕リスクや入居者トラブルの対応に追われることになるなどの点から、いったんリセットをするために該当の物件を売却するオーナーが非常に多いとされています。
Q. アパートの一室で孤独死が発生しました。他の入居者に知られずに売却可能?
他の入居者に知られずに売却することは可能です。専門業者に依頼した場合には、一般的な仲介のケースのようにインターネットやチラシなどを使用して「売り出し物件」として広告を行いません。この点から、他の入居者や近隣の住民に知られず、オーナー(所有者)の立場のみを静かに次の業者に引き継ぐ形での対応が可能です。
Q. 亡くなった入居者の遺品が残っており、特殊清掃もまだですが査定してもらえる?
亡くなった方の遺品が部屋の中に残っており、特殊清掃もまだ行っていない状況でも、専門業者であれば査定が可能です。室内にある荷物の片付け(残置物の撤去)や、特殊清掃、消臭作業などを全て引き受けてくれます。この点から、オーナーが事前に費用を立て替えて清掃業者の手配を行う必要はありません。
まとめ
こちらの記事では、保有している賃貸アパートやマンションなどに法的瑕疵がある、事故物件になったケースについて解説してきました。事故物件になった場合には、告知義務がある点に注意が必要となりますが、なかなか次の入居者が決まらない、売却しようとしても仲介会社が見つからないといった状況に陥ることがあります。このように、対応に迷ったときは、事故物件を扱う専門業者へ相談し、適切な手放し方のアドバイスを受けるようおすすめします。
