不動産の告知義務違反、つまり事故物件であることを隠して売却する行為は、さまざまな経路から発覚する可能性が高く、隠し通すことはほぼ不可能です。発覚した場合には、契約解除や売却代金の返還、多額の損害賠償請求といった深刻なペナルティを負うおそれがあります。当記事を通じ、告知義務の内容とリスクを正しく理解しておきましょう。
不動産の「告知義務」とは?どのようなケースで違反になる?
不動産を売却する際、売主には物件に関する重要な事実を買主へ伝える「告知義務」が課されています。この義務を怠ると、後から契約上のトラブルに発展する可能性があります。まずは告知義務の内容と違反となる具体的なケースを確認してみましょう。
告知義務とは?心理的瑕疵を伝える法律上の義務
告知義務とは、不動産取引において買主が物件を購入するかどうかの判断に大きな影響を与える事実を、契約前にあらかじめ伝えなければならないとする法律上の義務です。対象の物件内で自死や他殺、特殊清掃を要するような孤独死が発生していた場合など、いわゆる「心理的瑕疵」に該当する事案も告知義務の対象となります。
買主が事前にこうした事実を知っていれば購入を見送っていた可能性がある場合、売主はその事実を告げる義務を負うとされています。
告知義務が発生する基準とは?国交省ガイドライン
国土交通省がまとめたガイドラインでは、自然死や日常生活の中での転倒事故・誤嚥などの不慮の死については、原則として告知不要とされています。一方、自死や他殺、または発見の遅れにより特殊清掃が必要になった孤独死などについては、事案の発生(発覚)からおおむね3年間は告知が必要とされています。
ただし、事件性や社会的な影響が大きい事案では、3年が経過した後も告げる必要があるとされている点に注意が必要です。
伝え忘れも違反に?過失も問われる告知義務
告知義務違反は、事実を意図的に隠す「故意」のケースだけでなく、確認不足や伝え忘れといった「過失」によるものであっても成立するとされています。たとえ売主自身が過去の事案を把握していなかったとしても、通常であれば知り得たはずだと判断された場合には、責任を免れない可能性があります。
不動産の売却を検討する際は、対象物件で過去にどのような事案が発生していたかを事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
不動産の告知義務違反をするとどうなる?
告知義務に違反した場合、売却後に発覚することで買主との間でさまざまなトラブルへと発展するおそれがあります。ここでは、具体的に生じうるペナルティの内容について確認していきます。
契約解除により売却代金の返還を求められる
売却後に告知義務違反が発覚した場合、買主から売買契約そのものを解除される可能性があります。
契約が解除されると、売主はすでに受け取っている売却代金を全額、買主へ返還しなければなりません。物件を手放した後、その資金をすでに別の用途に充ててしまっていたとしても、返還義務が課されます。手元に返還分の資金を用意できなければ自腹で工面することを避けられず、結果として、次の住まいの確保をはじめとした生活設計にまで影響が及ぶおそれがあります。
損害賠償請求で違約金や引っ越し代なども負担
契約解除とあわせて、買主から損害賠償を請求されるケースもあります。賠償の対象は物件価格の減額分だけにとどまらず、買主が支払った仲介手数料や引っ越し費用、新居を探すためにかかった諸費用、さらには精神的苦痛に対する慰謝料にまで及ぶことがあります。
売却代金の返還義務に加えてこうした賠償金の支払いが重なると、当初想定していた以上の金銭的負担を一度に抱えることになりかねません。特に慰謝料は事案の内容や買主が受けた影響の大きさによって金額に幅が出るため、想定より高額になる可能性もあります。
仲介業者からの信用低下や費用請求のリスク
売却を依頼した不動産会社に対して事故物件であることを隠していた場合、後から事実が判明すると、仲介業者からの信用を失うことになります。不動産会社は本来、重要事項として買主に説明する立場にあるため、売主が事実を伝えていなかったと分かれば、以後の取引を断られたり他の物件の相談がしづらくなったりするおそれがあるでしょう。
場合によっては、業者側が被った損害について賠償を請求されるなど、単なる信頼関係の悪化にとどまらない金銭的なリスクに発展する可能性もあります。
裁判に発展すれば長期的な精神的ストレスも
買主との間で折り合いがつかず訴訟に発展した場合、解決までに長い時間と弁護士費用がかかるだけでなく、精神的な負担も大きくなります。裁判は一度提起されると簡単には取り下げられず、書面のやり取りや尋問への対応など、売主自身が当事者として関わり続けなければならない場面が続きます。
物件を手放して気持ちを整理したかったはずが、裁判対応に追われることでかえって長期にわたるトラブルを抱える結果になれば、当初の目的とは逆の状況となってしまいます。
「バレない」は間違い!告知義務違反が発覚する理由
「バレない」は間違い!告知義務違反が発覚する理由
事故物件であることを隠して売却しても、その事実はさまざまな経路から発覚するケースがほとんどです。たとえば、買主が入居した後にご近所付き合いや挨拶の場で、「ここ以前、大変でしたよね」と近隣住民から知らされてしまう例が多く見られます。なにより現代は、インターネット上の口コミや事故物件検索サイト(大島てる等)などを通じて、買主自身や不動産会社が事前に情報を調べることが可能です。
「時間が経てば分からなくなる」という考えは、今や通用しません。隠したままでの売却は、常に発覚のリスクと隣り合わせであると考えるべきでしょう。
事故物件を正しく手放す2つの選択肢
事故物件を手放す方法には、いくつかの選択肢があります。ここでは代表的な2つの方法について、それぞれのメリット・デメリットを確認していきましょう。
仲介での売却は「正しく告知」が大前提
一般の不動産仲介を利用して売却する場合、告知義務を果たしたうえで市場に売り出すことを前提としているため(隠していない限り)、後から契約解除や損害賠償を求められるといった法的なリスクは避けられます。
一方で、事故物件であることを理由に、買主から大幅な値下げを求められる可能性はあります。また、なかなか買い手が見つからなければ、その間の維持費がかさんでしまう点にも注意が必要です。
買取業者への「告知した上での現状買取」
もう一つの方法として、事故物件専門の買取業者への買取依頼があります。この場合も仲介と同様、事実関係をすべて業者側に開示したうえで買い取ってもらう形となります。
仲介による一般売却と比べて価格は低くなる傾向があるものの、現金化までの流れがスピーディーで売主側の手間も少なく済む点は、業者買取の大きなメリットとなります。
「専門買取業者」への売却が適している理由
専門買取業者であれば、事故や事件の経緯をそのまま正直に伝えたうえでの売却となるため、隠す罪悪感や不安を抱える必要がありません。また、買主が宅地建物取引業者である場合、契約不適合責任を負わない形での取引が可能になるため、売却後に想定外の請求を受けるリスクを抑えられます。
特殊清掃やリフォームも不要で、そのままの状態で買い取ってもらうことができます。市場に売却の宣伝をする必要はないので、近隣に知られることもありません。精神面や手続き面の負担がほとんどないまま、速やかに物件を手放して現金化できる点は、事故物件を抱える方にとって大きなメリットになるのではないでしょうか。
まとめ
不動産の告知義務違反は、売却後に契約解除や多額の損害賠償請求といった取り返しのつかないペナルティにつながる行為です。たとえ事実を隠したまま売却できたとしても、大半は後から発覚します。はじめから正しく告知したうえで、適正な売却を進めるよう腹を決めましょう。
そうとは言え、市場を通じた仲介による一般売却では、なかなか買主が見つからない可能性もあります。仮に見つかったとしても、事故物件であることを理由に大幅な値引きを交渉される可能性があるでしょう。
速やかに物件を手放して、精神的なストレスからも継続的な維持費からも解放されたい方にとっては、訳あり物件専門の買取業者に相談することが合理的かつ現実的な選択肢といえます。

